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不誠実な教科書:たとえば植物の分類

中学1年のお子さんで、理科の学習が第2分野から始まった方は、そろそろ「植物」の単元が終わるころでしょうか。
その中で種子植物の分類をやります。種子植物は裸子植物と被子植物に分かれ、被子植物は単子葉類と双子葉類に分かれます。
■種子植物=花が咲き、種子ができる。多くは種子でふえる。
 ●裸子植物=花に子房がなく、胚珠がむきだしになっている。マツ・イチョウなど
 ●被子植物=花に子房があり、その中に胚珠が包まれている。
   ◆単子葉類=子葉が1枚。葉脈は互いに平行。根はひげ根。イネ科やユリ科など。
   ◆双子葉類=子葉が2枚。葉脈は網目状。根は主根と側根とからなる。
さらに、双子葉類は…とくるのですが、ここが問題です。学校の教科書には「離弁花類と合弁花類に分かれる」とあるのですが、この表現には注意が必要です。双子葉類の中に、離弁花・合弁花というものがあるのは事実で(単子葉類にはこのような言い方をしません)、
     ★離弁花=花びらが1枚1枚離れているもの。サクラのようなやつ。
     ★合弁花=花びらが合わさっているもの。アサガオのようななつ。
というものですが、「離弁花類=離弁花をもつグループ、合弁花類=合弁花をもつグループ」ではないのです。ここのところが、教科書にはきちんと記載されていません。


教科書(第2分野「上」)をちょっとご覧になってみてください。「花びらが1枚1枚離れるものを離弁花類、花びらが合わさっているものを合弁花類という」といったことが書かれていると思います。私の手元には東京書籍・啓林館・教育出版の3社のものがありますが、表現に大差はありません。
教科書には「離弁花のグループが離弁花類、合弁花のグループが合弁花類」である、と単純に書かれているわけですが、実は
   離弁花類の中にも合弁花をもつものがあり、合弁花類の中にも離弁花をもつものがある
というのが本当です。たとえば、
 ・ツツジ科は(合弁花のほうが多いので)合弁花類に分類されるが、
  「ホツツジ」は離弁花をもつ
 ・ツバキ科は(離弁花のほうが多いので)離弁花類に分類されるが、
  「ヤブツバキ」は合弁花をもつ
というように。(詳しくは、たとえば福岡教育大の福原氏のサイトをご覧ください)
なんだ、それなら花びらのつきかたで分類するのは無理があるじゃないか、と考えるのが自然だと思います。離弁花類・合弁花類というのは古典的な言い方で、現在研究されている植物の進化の系統とは合わないもののようです。「離弁」「合弁」というちがいは確かに存在するので、そこを中学生に認識させるのはまあいいとしても、その観点で双子葉類を単純に二分するのは合理的でないことが今ではわかっているのです。
そもそも花は種子植物の生殖器官で、いちばん重要な学習事項は生殖の役割です。花びらがあるかないか、花びらが離れているか合わさっているか、などはその植物の進化上の個々の事情によるもので、そこに着目して分類するのは、全く無意味ではないにしても、本質的では決してありません。少なくとも、離弁花類・合弁花類を教えるのなら「それぞれの中に例外がある」ということを付記する必要があります。そうすればいいものをしないのは、誠実でないとしか言いようがありません。
理科の指導者(学校の先生など)がこの点をちゃんと理解していて、
「教科書にはこう書いてあるけれど、あまり正確ではない。例外があるんだよ」
と話してくれていれば、幸いです。また、ここがいちばん心配な点ですが、教科書の言葉遣いが絶対だという前提で定期テストが作られ、「離弁花類」「合弁花類」が正解であるような問題や「離弁花類とはどんな種類か説明せよ」といった問題を出題されなければいいが、と願わずにはいられません。あとは、高校入試ですね。
中学生は不誠実な教科書を持たされて事実を知らされず、教師も事実を知らずに(あるいは、知らないふりをして!)教科書どおり教えていれば、定期テストも高校入試も“無難に”過ぎていくのだから、目くじらを立てることはないじゃないか、という立場もありえましょうが、私はそれでは気持ちが悪いのです。「文科省と教科書会社と教師がよってたかって中学生をだましている」構図になっているからです。大袈裟に言えば、植物の世界に関して誤った世界観を子どもに植え付ける結果になってしまいます。
生物というのは、理科の中でも物理や化学に比べて最新の研究成果が反映されやすい分野で、私としても追随していくのが大変です。そんな中で、この辺りだけは最新の科学的知見が生かされていないように見えます。なぜでしょうか。
現行のひとつ前の学習指導要領ではこの辺りには深入りせず、花の咲かない植物、つまりシダ植物やコケ植物や藻類といったグループを中学生は学んでいました。植物というものの全体像をつかむにはこのほうが良かったはずですが、「3割削減」でカットされてしまい、その代わりなのか何なのか、古典的で、あまり本質的でない離弁花類・合弁花類が「復古」させられたということのようです。
実は、ある会社の教科書は、昨年までは離弁花類・合弁花類という誤解を生みやすい表現を避けて、花びらが「分かれている」「合わさっている」と区別するにとどめていました。他社よりも良心的で、私はこの件についてはその会社を最後のトリデのように見ていたのですが、今年改訂となった教科書からは他社と横並びになってしまいました。社会科のように政治的な“判断”が紛れ込むような問題ではありませんから、なぜこんな風になってしまったのか、解せません。何にしても、中学生にとっては災難なことですし、教師の端くれとしても残念なことではあります。

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