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塾長日記

2021年度公立高校入試について

(『神谷塾だより』第300号に記載したものに加筆修正)

数学と理科が易しくなり、5教科総合でも平均点は昨年を大きく上回りそうである。入試の難度が毎年バタバタ変わるのは入試全体の設計がなっていないからだが、今回の易化がもしも新型コロナ対策の長期休校と授業の遅れを考慮しての「手加減」によるのだとすればいただけない。数学を筆頭に出題範囲は大きく削減されていたのだから、「手加減」ならこれで十分だったのである。合格を目指して逆境にもめげずに学力を高めた生徒の努力が報われない。また、上位校では例によって高得点での激戦になっているだろう。問題がどうであろうと受験生は全員同じ条件で勝負するのだから、昨年と同程度の難しさで「差が付く」出題にすべきだったのだ。

ところで神谷はこの業界に30年近くいるが高校入試が雪で延期になったのは記憶にない。もう1日勉強できるのか!良かった!と喜んだ人も多かったと想像する。こういう不測の事態を幸運と捉える姿勢が勝負には重要になってくるように思うのである。

来年度は入試の形式が変わる。裁量問題が導入された09年は難しくて大騒ぎになった(教科書レベルだと道教委は言っていた)が、今度はその心配はなさそう。今の標準と裁量を合わせたようなセットになるはずである。ただし、本番を迎えるまでわからないことも多い。難度や出題形式がどう変わろうとタフに乗り切れる実力を、来年以降の受験生は身につけていってほしい。

以下、教科別にコメントする。問題番号は、国・数・英では裁量問題のもの。標準問題については割愛した。

国語
 全体に易しい。文法の問題がない。昨年は標準の[一]にだけあったが今年はそれもなし。1問でも出れば生徒は勉強するのに。
[一] 漢字・実用文。昨年に続き生徒会役員の会議。易しい。
[二] 文学的文章。川上健一『雨鱒の川』より。よく知られた素材で、道コンでも2011年1月の中3に出題されている。読んだことがある!と気を良くした生徒も多かったことだろう。設問は易しい。
[三] 裁量問題。説明的文章。辻惟雄『伊藤若冲』より。若冲は最近ブームとなっている江戸時代の天才画家だが、その人の話ではなく当時の文化状況を論じたもの。歴史の知識は不要。問四の記述が105字と長いが、9段落と11段落の必要部分を抜き書きしていけばそのくらいになるので難しくない。他の設問も易しい。
[四] 古典。『十訓抄』より、笛の名手で知られる博雅三位の物話。素材文は三位が亡くなったところで終わっているが、この話には続きがある。三位に劣らぬ名手が現れ三位が件の笛を手に入れた現場で吹いてみたところ、現れた元の持ち主が鬼だった…というのだ。なお、『古今著聞集』には三位が盗人に入られる話があり、笛だけ残して家財一切を盗まれるが、哀しみを癒やそうと笛を吹くとそれを聞いた盗人が感動して物を返しに来たそうな。

数学
 昨年度よりも易しくなった。中3後半のメイン部分がごっそり削減されたのが大きかっただろう。[3]問3や[5]問1のように解いた経験があるのとないのとで差がつく問題が目立った。
[1] 小問集合。すべて基本的。
[2] 式の計算。問1は誘導に乗って書いていくだけ。問2はストローの数が増えただけ。記述は問1の文章を参考にすればよい。
[3] 2次関数。問1・問2は例年通り基本的。問3は「光の反射の作図」と同じ原理で最短コースを探るもので、よく知られた問題。
[4] 平面図形。相似も円も削減されたので、ここは三角形の合同か平行四辺形の成立の「やや難」が出るだろうと予想していたが、拍子抜けするほど基本的。頑張って準備した生徒が気の毒。
[5] 裁量問題。問1(1)は有名問題。扇形の弧の部分が転がっている間は接点と中心との距離がすべて半径(一定)なので中心の軌跡は直線になる。問1(2)の図形は「ルーローの三角形」と呼ばれるもの(輪郭が弧なので「三角形」ではない)。(1)が解ける生徒には「ミエミエ」。問2は(1)(2)をきちんと取ること。(3)は点Pと点Qの位置で4通りに場合分けし、丁寧に思考すれば難しくない。

英語
 大問構成は例年どおり。関係代名詞が出題範囲から除外されたが、それで易化したということはなく昨年並みの難度のよう。
[1] リスニング。構成・配点とも昨年と同じ。やや易化。
[2] 短文・実用文。Bの問2の英作文がやや長めだが難しくない。
[3] 例年会話文だが今回は[4]が会話だからかここは長文。部活のキャプテンと学級委員とで忙しい生徒が教師からto-doリストを作るようにとアドバイスされる。なかなかためになる話。
[4] 裁量問題。Aは会話文。町の未来を考えるプロジェクトに参加した高校生に教師がクラウドファンディングのことを教える。予備 知識があれば読みやすいが、英文じたいは平易なのでそれで有利ということはなさそう。問4(1)は動名詞で始めることと後の of this town との接続がポイント。Bの英作文は解答要件が例年の2つから3つに増えて難化。3つめが書きにくい。

理科
 出題単元削減の影響を最も受けなかったのが理科だろう。昨年並みに難しいと予想したが、穏やかというか手応えのない出題。各大問とも設問の数に対して問うている内容が乏しく、深みがあるわけでもない。[2]生物がやや難。
[1] 小問集合。すべて基本的。
[2] 生物。消化。2種類の消化酵素のはたらきを調べる実験。北海道の理科はこの話が好きで09年と15年にも出ているが、今回はパイナップル汁を出してきたところが新しいとは言える。実験3でスキムミルク(タンパク質)が分解されてデンプンが分解されなかったのは,パイナップル液を40℃で4時間温める間にデンプン消化酵素がタンパク質分解酵素によって分解されてしまったため。酵素もタンパク質でできているからである。酵素が他の酵素に分解されることに思い至る受験生はごく少なく,何が起こっているのか見当がつかずモモヤモヤしたまま終えた子が多かっただろうと思われる。この点,先行の出題となっていた岡山20[5]は解きながら理解が進むようになっている良問であった。
[3] 化学。中和。酸とアルカリの組合せでさえあれば中和は起こるが、水酸化バリウムと塩酸を混ぜるのは全国的にも見かけない(教科書にないので)。ただし、珍しいだけで設問に工夫はない。
[4] 物理。力と圧力。問2は要するに「ゴム板の表の面が大気から受ける力よりも小さい力でゴム板がはがれる」理由を解き明かそうとしているのだが、設問はそこまで踏み込んでおらず、何を解かされているのかわかりにくい。
[5] 地学。地震。基本的。問5の記述は珍しく用語の説明で安直。

社会
 公民の経済分野・国際分野が削減されたが、これらは例年(各中学の授業の進捗状況を考慮してか)もともと出題が少ない。実質的に例年通りということである。構成も例年通り。
[1] 小問集合。問5(3)は米国の占領下にあった沖縄がベトナム戦争での米軍の拠点となっていた点に触れた。
[2] 歴史。問1の「コシャマイン」に意表を突かれる。問5は頻出の「エネルギー革命」に道内の炭鉱都市の状況を合わせたもの。
[3] 公民。現代社会・憲法・人権の小問集合のような出題。
[4] A世界地理とB日本地理。 B問1は理科(天気)でも頻出。問2はたぶん悪問。水戸は太平洋側、大分は瀬戸内だからと降水量の多いほうを①にすると間違う。大分は瀬戸内のくせに太平洋側の水戸より降水量が多いのだ。事実はそうなのだし、気温で決めれば正解できるが、「瀬戸内は年間を通じて降水量が少ない」という学習事項をつかうとアダになるのはどうなのか。

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