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合計特殊出生率

【旧ブログ「神谷塾的勉強と受験と子どもの教育」にも同記事をアップしています。こちらが読みづらい場合はどうぞ旧ブログをご覧ください】

「合計特殊出生率」という語句があります。中学社会では公民で日本の人口構成を学ぶところで「少子高齢化」などとともに出てきます。手許にある東京書籍『新しい社会 公民』ではp.12に太字(重要語句)で登場し,巻末の用語解説のp.248では次のように記述されています。

一人の女性が一生の間に生む子どもの平均人数のこと。日本の人口が将来にわたって減少しないためには,2.07以上が必要といわれている。

この語句を初めて目にしてから随分になります。なんとなく分かったようなつもりになって,恥ずかしながら積極的に理解しようとはしていませんでした。が,仕事や生活が落ち着いてくるといろいろなことが気になり始めるものです。

「合計」って何を合計するんだ。「特殊」ってどう特殊なんだ。

わざわざこんな名前がついているからには,定義なり算出方法に「合計」とか「特殊」を説明する要素があるはずです。だから,中学生の教科書には書かれていないけれど,きっとどこかに説明があるだろう。そう思いました。教科書の解説は(教科書だから仕方が無いのかも知れませんが)通り一遍で,これでは納得がいかない子もいるでしょう。教師だって困っているかも知れない。そして,「そんなことは気にしないで暗記しろ」というのは私の趣味ではありません。

ネットで検索すると,英語では total fertility rate ,略して TFR ということがわかりました。total は「合計の」,fertility は「多産であること」, rate は「割合,率」ですから,合わせて「合計出生率」という意味になりそうですが,日本語にすると「特殊」という語句が付いてしまう。この点がまだ謎ですが,少し横に置いて続けます。

厚生労働省が定義と計算方法を詳しく書いていました。「平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況」(平成23年は2011年)です。

ここでの解説とデータを参考に,より噛み砕いた説明を試みましょう。まず「年齢別出生率」というものを理解する必要があります。

「年齢別出生率」とはこうです。ある年に30歳の女性が60万人いたとして,そのうち出産した人から4万人の子が生まれたとすると,その年の30歳女性による「年齢別出生率」は4万÷60万で約0.067となります。これを,その年の15歳から49歳までの女性について年齢別に求め,それを合計するのです。平成23年の資料では5歳ごとの階級で区分されていて,

  15~19歳の合計は 0.0227
  20~24歳の合計は 0.1710
  25~29歳の合計は 0.4349
  30~34歳の合計は 0.4836
  35~39歳の合計は 0.2390
  40~44歳の合計は 0.0408
  45~49歳の合計は 0.0011

以上を合計すると1.3931になります。これを平成23年の「期間合計特殊出生率」といいます。

一般に用いられる合計特殊出生率とはこの「期間合計特殊出生率」を指し,これが「一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当する」というのです。どういうことでしょうか。

ここで「コーホート合計特殊出生率」という考え方が登場します。コーホート(英:cohort)とは,統計用語としては「同一年齢層」などの「群」を意味するそうですが,英語の第一義は「歩兵隊」で,軍団(legion)を10に分けた1隊のことらしい。どうしてこんな語が平気で遣われているのか首を傾げますが,ここは先を急ぎます。

平成23年に49歳だった女性は1962(昭和37)年生まれです。この年に生まれた女性全員をひと組にしたのが昭和37年生まれのコーホート,身近な言い方では「昭和37年組」となるでしょうか。この昭和37年組を15歳になる1977(昭和52)年から49歳になる2011(平成23)年まで追跡し,年齢ごとの出生率を合計すると,昭和37年組の「コーホート合計特殊出生率」となります。これこそ,昭和37年組について「一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数」の平均ということになります。

上の資料では1962年生まれから1966(昭和41)年生まれまでを一つの世代と見て粗い計算をしたものが示されています。「昭和37年~昭和41年組」の年齢別出生率は

  15~19歳で合計 0.0196
  20~24歳で合計 0.3016
  25~29歳で合計 0.6956
  30~34歳で合計 0.4895
  35~39歳で合計 0.1659
  40~44歳で合計 0.0286
  45~49歳で合計 0.0011

以上を合計すると1.7019になります。これが昭和37年~昭和41年組の「コーホート合計特殊出生率」です。

この値はその世代の出生率を直接表すものですが,その世代が50歳に到達するまで得られない。そこで,これに相当するものとして先の「期間合計特殊出生率」が用いられるというわけです。
各年齢別の出生率が世代(コーホート)によらず同じであれば,二つの「合計特殊出生率」は一致することになりますが,実際は各世代で結婚や出産の行動に違いがあるため,二つの値は異なります。

ここまでのまとめとして,上の資料の冒頭に書かれていることを引用しておきます。

合計特殊出生率は「15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの」で、次の2つの種類があり、一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当する。
A「期間」合計特殊出生率
ある期間(1年間)の出生状況に着目したもので、その年における各年齢(15~49歳)の女性の出生率を合計したもの。
女性人口の年齢構成の違いを除いた「その年の出生率」であり、年次比較、国際比較、地域比較に用いられている。
B「コーホート」合計特殊出生率
ある世代の出生状況に着目したもので、同一世代生まれ(コーホート)の女性の各年齢(15~49歳)の出生率を過去から積み上げたもの。
「その世代の出生率」である。

さて,計算方法と「合計」の意味はどうやらわかりましたが,「特殊」の由来がまだ謎のままです。検索条件を変えていろいろ試してみましたが,なかなかヒットしません。

みんな気にならないのか? 関係ありませんが「特殊相対性理論」の「特殊」には「特殊」たる所以があり,「一般相対性理論」との明確な意味の違いがあります。物理の学生がこれを説明できなかったらマズイのです。

ようやく見つけたのがこのブログ記事です。

このブログの方は青学大の先生のサイトをさらに引用されています。残念ながらそのサイトは閲覧できなくなっていますが,「特殊」の意味はわかりました。良かったー。

「普通」の「出生率」があるのですね。後でわかりましたが,厚労省の別の資料にもありました。

  普通出生率=(年間出生数)÷(10月1日現在人口)×1000

昔から知っている出生数はこちらでした。ついでに「死亡率」も。

  普通死亡率=(年間死亡数)÷(10月1日現在人口)×1000

これら二つを組み合わせる(引き算?)と自然人口増加率が導き出されます。

普通出生率は,これはこれで意義のある数値ですが,出産に直接関わらない男性や高齢女性・年少女性も分母に含まれてしまう点,指標としては使いにくいのです。(期間)合計特殊出生率はその国・地域や年次の性別構成とか年齢構成などの偏りに影響されない点,優れているということです。

最後に,合計特殊出生率の数値の意味について。最初に引用した中学公民教科書の解説に「日本の人口が将来にわたって減少しないためには,2.07以上が必要といわれている」とありますが,なぜピッタリ2ではいけないのでしょうか。出生率が2であれば,男女のペア1組から子ども2人ということですから人口がトントンのはずです。

ところが,生まれる子どもの中には,不幸にして成人する前に亡くなる場合とか,子どもを産まない/産めない場合もあり得るわけですね。この部分を調整して加算した部分が0.07ということになるようです。

なお,大分県のHPにも「普通」と「特殊」の解説があり,助かりました。

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